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【レポート】美術館×演劇プログラム「大人のためのプレイフルワーク 〜美術館のはらっぱであそぼう〜」


今年も演劇教育の手法を取り入れたワークショップを開催しました!



6月23日実施「大人のためのプレイフルワーク〜美術館のはらっぱであそぼう〜」


日 時:2024年6月23日(日) 13:30-15:00 
会 場:弘前れんが倉庫美術館スタジオB、屋外
講師:太田歩(演劇ユニット一揆の星)、アシスタント:岩渕和也

風やまちの音を探す、太陽の光を触るなど…「はらっぱ」 にあるもので遊び、外の景色と触れ合うことで、五感をひらき心をほぐす、大人のためのアートな野あそびワークショップ。
美術館×演劇プログラムでは、初の屋外活動を取り入れました。


活動の冒頭に、講師の太田さんから参加者へ2つの約束事が伝えられました。

「Play to play」そもそもこれは遊びです(正解や失敗はありません。)
「自分の身は自分で守る」これを話したら自分の心が傷つくかも、と思ったら無理に話そうとしなくていいですよ。また体の無理も禁物です。


さあ、プレイフルワークの始まりです。


ウォーミングアップ


参加者のほぼ全員が当館のワークショップに初参加でした。
まずは簡単に自己紹介から始めます。
世界一短いスピーチで「呼ばれたい名前、好きな色、好きな季節」をひとりずつ発表します。

「あゆです。好きな色は〇〇です。」シンプルで短い自己紹介スピーチ。


参加者同士の名前を知り、呼び合うことで、この場に居合わせた者同士の関係性を作っていきます。

スピーチの後は感覚をほぐすためのウォーミングアップへと移ります。

身の回りのものの中から形や色を見つける遊びをしました。
外側の環境に集中することで、新たな気づきを得るゲームです。

スタジオの中から「丸をみつけてください」「三角形をみつけてください」などの合図が出されるとみつけたものを指さします。
この時は「青色を見つけてください」の合図で参加者の服の色に反応しました。


次は「たくさんの音をみつけてみましょう」。
20秒ぐらい静かに耳をすませます。
・・・・・・
同じスタジオの中でも3〜4つ探せた人がいれば、9つみつけた人もいました。


さあ、外に出よう


今回のワークショップでは外(緑地)で音を拾ってきて、どんな音があったのかをみんなで共有することで、音で外の風景を描く遊びをしました。

視覚から聴覚に意識を向けるウォーミングアップを済ませたら、いよいよ外に出発。

太田さんを先頭に、美術館の前に広がる緑地をゆっくり歩きます。
歩いている途中でみつけた音も、それぞれに記憶して拾っていきます。


この時はちょうど緑地にねぷた小屋が建てられている真っ最中でした。
皆さん音に集中して歩いています。


花が咲いているところも歩いてみます。
草を踏みしめる音が先ほどと少し違うようです。


レンガで舗装された道も歩きます。
すぐそばには土淵川が流れ、弘南鉄道の線路もあります。


緑地を半分程度歩いたところで、線路近くにある木陰に集合しました。
各自で持参したタオルを敷いて座ります。
この日は曇り空で、暑すぎず、湿度も高くなく、木陰には気持ちの良い風が吹いていました。


まずは屋外のこの環境に体を慣らすために軽いストレッチを行いました。

肩をゆっくり回したり…


目を閉じてゆっくりと深呼吸したり…


落ち着いてきたところで、太田さんが、擬音を用いた詩である、くどうなおこの「のはらうた」から「おと」を朗読しました。

今日の活動では、耳を澄ませて音を集めて、自分なりのオノマトペ(擬音)をつくって共有してみることに。

ここからは思い思いの座り方でリラックスして音を拾いました。
10分ぐらいジーっとしていると、電車が通過する音や、コインパーキングの出庫の音も聞こえてきました。


頭上の木には鳥も集まってきているようです。


寝転がっているうちに眠ってしまう人も。


アウトプット わたしがみつけた音


時間になり、前半の活動を終え、一旦休憩へ。
後半からは美術館の中にまた戻って活動しました。

まずは参加者の皆さんがそれぞれにみつけた音を書き出します。
付箋一枚につき音ひとつ、拾った分だけ書き出しました。
オリジナルのオノマトペで良いので、正解も間違いもありません。



オノマトペを書き出したら、拾った音をそれぞれ発表してもらいました。
ここでは書き出した音を説明せずにそのまま読んでもらい、その後それぞれから解説をしてもらいます。
すると、さっきまでいた外の風景が出現するような、不思議な空間が生まれました。


書き出した音をホワイトボードに貼り出して、全体で共有し、自分が一番好きだと感じた音をひとつだけ決めました。ここでは他の人が見つけた音を選んでもOKです。




音を選んだら1人1オノマトペを声に出して合唱をしました。
1人が指揮者役となり、参加者へ声を出すタイミングを指示します。

最初は指揮者の指示を受け取るのに苦戦していた様子でしたが、参加者からも指揮者役を募り、即興的な合唱をして今回の遊びを終えました。

活動の最後は少人数のグループになり、今回の活動の感想言い合いました。

ワークショップの時間はここまでで終わりましたが、まだ話し足りない人はその場に残っておしゃべりをして、それぞれのタイミングで帰っていきました。

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!




自分を起点にして世界を捉え直す



今回は車椅子利用者の参加者も交えた活動になりました。
身体の動きには制限がありますが、指差しや文字盤を使ってコミュニケーションができることを活かし、ワークショップ内でも言葉を使ったアウトプットを盛り込んだ活動内容を検討しました。
ところどころ、声を発して音を伝えたり、合唱したりする場面では、介助者や講師アシスタントの方に代役を務めてもらいました。

参加者の中には、車椅子の回転する車輪にブタナ(茎の長いタンポポに似た草花)が当たる音を見つけて「ポコロン ポコロン」と表現した方もいて、それを他の参加者が好きな音として選ぶ場面もありました。


今回のワークショップでは「大人のためのプレイフルワーク」として、スマートフォンの利用などで日常的に多用している視覚が優位になる活動から離れて、聴覚を意識して過ごしてみる遊びを行いました。
外に出て木陰で座っているだけで、音や光、風など、さまざまな感覚を使っていることに気づきました。 

外で見つけた音からオリジナルのオノマトペをつくるワークショップを通じて、自分を起点にしていつもの日常を捉え直すような体験が生まれました。


今後も演劇教育の手法を取り入れた鑑賞活動やワークショップを行う予定です。
開催に関してはWebサイト等でお知らせしていきます。
いつもと少し違う美術館の過ごし方を体験をしてみたい方など、ご参加をお待ちしております。





(写真・文:宮本ふみ)