【レポート】7月実施|展覧会鑑賞×演劇創作ワークショップ「もうひとつの地平線」
弘前れんが倉庫美術館では今年も演劇を取り入れたプログラムを実施!
昨年度、弘前エクスチェンジ#05「ナラヒロ」では、期間限定の演劇部「もしもし演劇部」を立ち上げて、リサーチを元にして演劇創作を行う活動に取り組みました。
◉「もしもし演劇部」のレポートはこちらから↓
言葉と身体で「つくりだす」鑑賞プログラム
「昨年度のもしもし演劇部、面白かったな…」ということで、今年度は演劇教育を取り入れた鑑賞プログラムを実施することに。
上半期は開催中の展覧会「大巻伸嗣ー地平線のゆくえ」を鑑賞し、感じたことや思ったことをもとに、ワンシーンだけの短い演劇を創作する活動を7月から9月の期間に月1回のペースで行います。
今回は7月実施回の様子をお伝えします。
さてさて、3時間ほどの活動で、どんな作品が創作できたのでしょうか?
7月8日(土)実施 「もうひとつの地平線」
日時:2023年7月8日(土)13:30-16:30
会場:弘前れんが倉庫美術館 スタジオB、展示室
講師:太田歩(演劇ユニット 一揆の星)、アシスタント2名(相馬光、齋藤衡)
初回は4名の参加者が集まりました。
全員が演劇経験未経験ながらも、「つくることへの興味があって」「自分にとって新しい物差しが得られたら」など、それぞれにワークショップへの期待をこめて参加してくれました。
まずは講師の太田さんから、ワークショップに参加するにあたり、活動について、いくつかのポイントが伝えられました。
「Play to play」そもそもこれは遊びです(正解や失敗はありません。)
「Yes and …」相手の言葉を肯定してから自分の言葉を続けてください。
「自分の身は自分で守る」これを話したら自分の心が傷つくかも、と思ったら無理に話そうとしなくていいですよ。また体の無理も禁物です。
ウォーミングアップ 体と耳をほぐす
自己紹介と簡単な活動紹介が終わったら軽い準備運動からスタート。
さらに、参加者全員で手を握って輪になり、自分の右隣の人が手を握ったら、今度は左隣の人の手を握って…というリレーのような、感覚をほぐすシアターゲームを行なって身体をリラックスさせました。
体の感覚が徐々にひらけてきたら、次は耳をほぐすストレッチへ。
スタジオの扉を解放し、耳を澄まして「一番遠くから聞こえる音」と「一番近くから聞こえる音」を探すゲームをしました。
また目を閉じた状態で、足音だけを頼りに、人の動きをどこまで追えるのか「追跡ゲーム」も行いました。
1人の足音から2人の足音へと難易度を上げながら、音のする方を指差しで追っていきます。
徐々に体が音を敏感に捉えられるようになったところで、サウンドドラマに取り組みました。
今回は新聞紙を触る音から想像を膨らませ物語を作ってみました。
「台所で鍋を洗って、コンロで火にかけて…」
「縁側にいながら台所や居間の様子を見ていて…」
「小さい頃の自分になった感覚で、秋の季節を感じて…」
「満員電車でサラリーマンが新聞を読んでいるところで…」
「大きな鳥が羽ばたいている様子で…」
とそれぞれ音からシーンを想像しました。
まずは解説なしで展示作品を見てみよう
音に対して敏感になり、想像を膨らませて、感覚をキャッチできるようになってきたところで、展示室へ。
まずは作品の解説など無しで展示室を1周します。
どんな感じがした?言葉でアウトプット
展示室から戻り休憩も入れながら、いよいよ創作の時間へ。
ここからは講師を含め3人ずつ2チームに分かれて活動に取り組みます。
展覧会を見て感じたこと・思ったこと・想像したことを言葉で書き出していきました。
「こんな感じがした」「なんでそう感じたの?」など、作品の第一印象からどうしてそれを感じたのかを言葉にしていきます。
また、なかなか言語化が難しい部分も、似た感覚で作品を捉えている参加者がいると、「自分が言葉にできない部分を他者が代わりに言語化している気がする」といったような言葉が参加者から出てきた場面もありました。
シーンづくり/体でアウトプット
言葉で話したり書き出したりする活動を経て、お互いに見えてきたイメージをさらに膨らませて、体でシーンをつくっていきます。
登場するものや人・場面を身体を使ってポーズ。
体で動きをつけだすとスルスルとアイディアが形になっていきます。
こちらのチームは2つのシーンをつくっています。
もう一方のチームはなかなか動き出せないようでしたが、「身体を動かしたら形になりますよ」と太田さんが一言。
机を片付けて動いてみると、その言葉の通り、動いてみたらあっという間にシーンができました。
発表!完成したシーンはこちらです
完成したワンシーンだけの創作演劇を発表。
ポーズをとって5秒くらい停止。その次に即興でセリフをつけて30秒動いてみました。
まずはこちらのチームから発表しました。
どんなシーンだったのか、相手チームに感想を聞いてみます。
そして、つくったチームから、どういう背景で作られたシーンだったのかを解説してもらいました。
「実は暗い展示室は産道なんじゃないか」
「布の作品は子宮のような感じ」
「最後の明るい部屋は頭が出てきて初めて目にした外界の明かりなんじゃないか」
という話から、「生命がこの世に誕生する」シーンができました。
もう一方のチームは2つのシーンをつくりました。
まずはこのシーン。
そしてもうワンシーン。
このチームへはシーンの登場人物へインタビューして、どんなことが起こっているのか聞いてみました。
こちらのチームは、先ほどのチームとは正反対の「死」をイメージしながらつくったそうです。
《KODAMA》の木が立ち並ぶ展示空間が「地中の中にいる感じがする」というイメージと、コンコンと響いている音が「行き先を惑わせている音に感じた」というところから、魂が彷徨って迷っているシーンを想像して作られました。
改めて展示室で作品鑑賞
2チームの発表も終わり、それぞれ制作に至った背景を説明してもらった後は、再び展示室へ向かい作品を鑑賞しました。
自分では気づかなかった見方を得た後に展示を見ると、また新しい発見があったようです。
またスタッフからの解説も交えることで、作品への理解も深めました。
感想タイムで終了
最後に参加者ひとりひとりから今日の感想を聞きました。
「このワークショップがきっかけで初めて足を運んだ。」
「一人で見るのとはまた違って、何回見ても違う発見ができそう。」
「現代アートはわからないとよく言われるが、自分の感覚で作品を見ていく楽しさが味わえた。また、解説がありながら見るとさらに新しい発見があった。」
「解説を聞いても揺るがない自分の見方もあり、個人的体験に昇華できた活動だったと思う。」
「自分では考えられない方向から作品を鑑賞できて、この経験が日常生活でも起こり得る体験になるのではないかと思った。」
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同じ作品を見て、出てきた言葉には共通する部分もありながら、創作したシーンは全く別のものになりました。
他者の感性に触れることで、自分一人では得られない見方に触れることができた一方で、他者と言葉を交わすうちに自分の見方がさらにはっきりしてくるような鑑賞体験に出会えた機会になったのではないでしょうか。
参加者募集中!次回8月19日(土)実施です
さて、いかがでしたでしょうか?
一人で鑑賞するのも楽しいですが、この場で出会った人たちと鑑賞したことをシェアし、それを体と言葉で動きをつけて「演劇」にしてみることで作品の見方や世界がさらに広がっていくのではないでしょうか。
次回は8月19日実施です。
参加の予約はこちらから行なっています↓
「つくりたい欲求が湧いてきた」
「作品の見方を変えてみたい」
「いつもと違う刺激が欲しい」
「演劇のワークショップに興味あり!」
「アサーティブコミュニケーションの参考になりそう」
「予定ないしやってもいいかな」
など…気になる方はぜひ参加してみてください!
演劇の経験はなくても誰でも参加できる鑑賞プログラムです。
皆さんのご参加、お待ちしてます🌷
(記録:宮本)
(撮影:佐々木、宮本)