【レポート】もしもし演劇部3回目活動|ドラマを見つけよう!ポーズで表現「思い出のワンショット」
「もしもし演劇部」
「もしもし演劇部」は弘前エクスチェンジ#05「ナラヒロ」のプログラムのひとつとして、2000年代に3度にわたり美術館になる前のれんが倉庫で開催された弘前市出身の現代美術作家・奈良美智の展覧会にまつわる個々人の体験の記憶などをリサーチしながら、オムニバス形式の演劇作品を創作します。完成した劇は、2022年度展覧会[秋冬プログラム]「もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?」会期中に展示室でドラマリーディング(朗読劇)形式で上演します。
前回の工作を経て、部員たちのチームワークも出来始めてきた雰囲気の中行われた3回目活動は「ドラマを見つけよう!」をテーマに、体験入部の際にも紹介した「だれ」「どこ」「なに」の「なに」に着目した活動に取り組みました。
※体験入部のレポートはこちらから↓
何気ない瞬間がドラマに?「会話スケッチ」を発表
実は…前回の活動の終わりに講師の太田さんから出された課題がありました。それが「会話スケッチをとってくる」というもの。
「会話スケッチ」とは日常のあるワンシーンを切り取って演劇の台本にしてみるというもので、どんな人(身長・年齢・体型・服装など…)の、いつ・どこで聞いた話だったかを切りのいいところまで書いてみるというものです。
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スケッチの例)
男1 ロマネ・コンティ(※ワインの名前)だって。
男2 ロマネ・コンティ?
男1 金持ちのイメージがそれだのよ、ロマネ・コンティ。
男2 どうなのよ、それ
(……)
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この課題を通じて、ドラマ(台本)を作ることに対するイメージを持ってもらうこと、そして注意深く自分の身の回りの出来事を観察することをねらいにしています。
この日の活動はまず、部員たちがそれぞれどんな「会話スケッチ」をしてきたのかの発表からスタート。みんなが切り取って持ってきたスケッチが、なんとなんと面白いこと!
「某コーヒーショップで聞いた、綺麗めのオタク女子たちの会話」
「帰省先の仙台駅で偶然隣に居合わせたカップルのワンシーン」
「昼過ぎのコンビニのレジで、前に並んでいた人たちと店員のやりとり」
「家で母が祖母と通話していた時の話」
などなど…。こんなふうに書いたところで「なにが面白いの?」という感じですが、日常のなんでもないシーンを切り取って改めて読むだけなのに、なぜか面白いのです。(私も喫茶店やスーパー、温泉などで注意深く会話を聞いてみたくなりました。)
ドラマは私たちの身の回りの日常に溢れてるんですね。
奈良展のあの時の空気に触れよう
会話スケッチの発表を聞いて場も温まったところで、今日の活動のメインである、ビデオをみる時間に移りました。
ビデオを見せてくれたのは奈良展ボランティア経験者でharappaのスタッフを経て当館の職員となった小杉さん。もしもし演劇部では教頭先生のようなポジションで部員からは「ありさん」と呼ばれています。小杉さんは当時は弘前大学の学生で、映像系のサークルに所属していたこともあり、ビデオ係を担当していたそうです。
当時小杉さんが撮影していた動画を見ながらエピソードを交えて部員に紹介してくれました。ビデオに記録された様子から、一体どんな「なに」(出来事)が起こっているのかに注目しながらみてみます。
映像では2002年「I DON’T MIND, IF YOU FORGET ME.」の会場づくりから展覧会開幕、そして閉幕までの様子がおさめられていました。多くのボランティアが奮闘する姿に、奈良さんが作品を設営する様子など。
さて、部員のみんなは奈良展の裏側で起こっていたどんな出来事が印象に残ったのでしょうか…
思い出のワンシーンをせーのでポーズ!
5分ほど休憩を経て、今日のまとめの活動としてグループになって、とあるワンシーンを体でポーズをとりました。まずは軽くウィーミングアップのシアターゲーム「ナイフアンドフォーク」から行います。
2人1組で相談をせずにそれぞれポーズをとるので、ポーズがかぶったらどちらか一方が変えるなどして相手と息を合わせる必要があります。
「鉛筆と消しゴム」「お箸とお茶碗」「花びんとお花」など、お題を変えて身体をほぐします。
さて、本題です。
「さっき見た映像から思い出のワンシーンを作ってみましょう」の合図で「だれ」が「どこ」で「なに」をしているどんな場面にするか、どんなポーズにするか、4人で相談して決めていきます。
「どんな場面があったっけ?」と印象に残っているエピソードとワンシーンを伝え合います。
どんな場面のポーズ?
さあ、3分ほどの相談で両グループともポーズができたようです。
まずはこちらのグループから見てみましょう。
これは「倉庫内の掃除で新聞紙と水を撒いて掃き掃除をして湿度が高くなった」というエピソードから切り取ったワンシーン。
1人が水をホースで撒き、湿らせた新聞紙を足とブラシで寄せ、1人は湿度計を手にしているようです。
さて、もう一方のグループはどうでしょう?
これはなんでしょう…?
…正解は「カフェの椅子を作っているところで、椅子のあしの部分の木材にペンキを馴染ませているシーン」でした。うずくまっているひとはペンキが入った容器になりきっています。
最後は全員でワンシーンを作ってみました。
「8人だから人数が多いシーンできるね」と5分ぐらい話し合って、どんな場面をつくるか決めます。
そしてできたのがこちら。
「I DON’T MIND, IF YOU FORGET ME.」〜のオープニングイベントのライブハウスでのシーンを切り取りました。
バンドで演奏している人たち、DJ、フロアで盛り上がる人、寝てる人、飲んでる人、一服してる人…。
人数が増えると表現できる場面も変わりますね。
アウトプットをすることで、リサーチで得たことの「なに」に着目できているのか・「なに」が印象的な場面として記憶されたのかが見えてきます。
最後に太田さんが、改めて「だれ」「どこ」「なに」についてポイント整理。
ドラマを作っていく際には、「だれ」に着目して「どこ」「なに」を膨らませていくやり方もあれば、「なに」に着目して「なに」「どこ」を広げていく方法もあるとのこと。後半の部活動に向けて、劇作へのぼんやりとしたイメージを徐々に掴んでいくところで今日の活動は終わりです。
次回は奈良展関係者1名をゲストにお呼びしてインタビューを通じたリサーチ活動に取り組みます。どんな話が聞けるのか楽しみです。
前回(2回目活動)のレポートはこちら▼
(記録:宮本)
(写真:小杉、佐々木)