【レポート】美術館×演劇プログラム|ケアラー・ケアワーカーのためのワークショップ『ほぐすトレッチ』
昨年に引き続き、演劇教育の手法を取り入れたワークショップを開催します!
美術館×演劇プログラム『ここにいること つたえあうこと』
自他のケア/自分の表現/未来を育てるコミュニケーションのはなし
わたしたちの身の回りの風景に目を向けてみると、自分以外のひとやものとのコミュニケーションがあちこちで起こっています。
その手段はことば以外にも、身振り・手振り・表情などもあり、周囲の環境やその人がこれまでに過ごしてきた時間も影響するのではないでしょうか。
このたび、弘前れんが倉庫美術館では演劇/演劇教育の手法を知る・体験する3つのプログラムを行います。
演劇は登場人物同士のコミュニケーションで物語が進み、俳優と観客が一体となった空間で虚構の世界を成立させます。いわば、コミュニケーションの芸術といえるでしょう。演劇は多様な視点から日常を見渡すきっかけをもたらし、そして演劇教育は想像の世界と現実世界を行き来する柔軟な思考を育みます。どちらも私たちに「生きる力」をもたらしてくれます。
演劇にまつわる複数のプログラムを通じて、参加者の皆さんとともに健やかな未来に向けて、豊かな共生と開かれた感性の育成の種を地域に蒔くことを目指します。
自他のケアについて考える|ケアラー・ケアワーカーのためのワークショップ 『ほぐすトレッチ』
1月20日は「ケア」に着目したワークショップを実施。
子育てや介護、保育や看護の仕事など、日常的にひとのお世話をする立場にある方々が、意識的に「自分のからだの在りどころ」再認識し、自分の心身と出会いなおすことを目指した、演劇ワークショップです。
自他の存在を認め合いながら関係を構築していく演劇の力を借りて、同じ場に集い、会話し、遊びを通じて感覚的に心と体をほぐす場を目指した取り組みです。
ワークショップ当日の様子をレポート!
2024年1月20日の13:30からスタート。
今回のワークショップは講師に太田歩さん(弘前市岩木地区地域おこし協力隊)と宮﨑充治さん(弘前大学教育学部教授)をお招きしました。
講師のお二人から簡単な自己紹介をしていただき、活動内容の説明をしていただきました。
・自分の身は自分で守る
・演劇は「ウソ」
・「いいね!」をしあおう
「演劇はごっこ遊び。言いたくないことは言わなくてもOK。この時間はお互いに心を通わせて、心も体もほぐしましょう。」
まずはウォーミングアップから始まりです。
円になって座り「世界一短いスピーチ」というアイスブレイクの活動を通じて、参加者同士の名前を覚えるために、簡単な自己紹介をしました。
好きな食べ物、好きな色、好きな動物を交えた短い自己紹介スピーチを行い、少し参加者同士で挨拶ができたら、今度は立って活動です。
人生を思い出す、想像する心のストレッチ
これまでの自分が何をしていたのか。
部屋の中を日本列島に見立てて、現在地から「昨日いた場所」「1年前にいた場所」「3年前にいた場所」「10年前にいた場所」を遡って移動し、それぞれの生活史をたどります。
今度は、0歳から100歳までを移動します。
移動しながら、その時、どんなことをしていたかをポーズで表現してみました。
ここでは実年齢を超えたら、理想と想像で行きたい場所に移動できます。
0歳、3歳、10歳、13歳、高校1年生、
20歳、30歳、40歳、60歳、そして90歳の自分…
過去を振り返る場面では、同じ歳の時に何をしていたのかを共有し、
未来を想像する場面では、自由な発想が参加者同士に「その手があったか!」という刺激と発見をもたらしました。
次は体もストレッチ
また円になって座り、体ものびのびとほぐしました。
先ほど想像した「60歳の自分」と「90歳の自分」。
その間の70・80歳では何をしているのかを想像しながら、ゆっくり呼吸して、体と心をリラックス。
程よい感じにほぐれたところで、前半の活動はここまで。
10分のお茶休憩を経て、後半の活動を再開しました。
後半はシアターゲームからスタート。
見えないボールを想像して手回しするゲームでは、小さなボールから、徐々に大きなボールへと変化させます。
最後は(想像で)大きな風船をポヨーンと膨らませて、上半身を大きく使いながら遊びました。
日常の中の幸せ
ささやかな瞬間を思い出してみる
体がほかほかに温まったところで、ワンシーン創作の活動へと展開しました。
この活動では参加者が思う「日常の中の幸せのひととき」をテーマに、グループでワンシーンを作ってみました。
まずはそれぞれに思う「幸せのひととき」を考えます。
娘と昼寝、娘とデート、寝る直前
…などが出てきました。
実体験かつ日常の一コマから見つけた幸せのひとときのシェアは、エピソードを聞いている側も満たされた気分になりました。
さて、ここからが本題です。
参加者の「幸せのひととき」が書かれた紙をシャッフルして、くじ引きのようにグループで1つ選び、その紙に書かれているシーンを想像し、創作してみました。
2グループを作ったので、完成したシーンを見せ合って、それぞれどんなシーンを作ったのかを考えてみました。
幸せのひとときはどんな場面?
さあ、完成したシーンの発表です。
まずはこちらのグループから。
こちらのグループは「食べ歩き」を楽しむシーンを作りました。
ピースをしているのはアップルパイを持ってきた店員さんだそうです。
そして、もう一方のグループはこんなシーンになりました。
こちらのグループは「映画鑑賞」のワンシーンを作りました。
たまたま選んだ紙が、書いた本人のものだったこともあり、ご本人が好きだというドキュメンタリー系の映画をみているワンシーンを作りました。
どんな時間でしたか?
しるらないカードで今の気持ちを振り返り
全てのワークが終わり、最後はお茶とお菓子を食べながら、今日の活動をざっくばらんに振り返りました。
活動の途中で出てきたそれぞれの仕事の話、創作の場面で気づいたこと、寝転びながら考えたことなど、「あれ良かった!」「こんなこと思った」ということを話しました。
最後に、「しるらないカード」を使って今日の活動を振り返った感想をシェアしました。
*「しるらないカード」はプロジェクトアドベンチャージャパンのオリジナルツールです
「他の人の人生を垣間見て、新鮮な驚きがあった」
「実は終始緊張していたが、自分の知らなかったことをひとつずつ積み重ねていっている感じがした」
「普段は1人で閉じてしまうことが多いが、この時間では自分がひらけたような感じがした」
といった感想を聞くことができました。
参加してくださった皆さん、ありがとうございました!
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ケアってなんだろう?
初めてケアラー・ケアワーカーの方々を主な対象にして開催した今回のワークショップですが…
「ケアとは一体何なのか?」
「自分の時間を持つことに、そもそもケアという意識はあるのか?」
この取り組みを通して、講師のお二人と美術館の担当スタッフは常にこのお題に直面し、話し合いを重ねました。
ワークショップに集まる人は、もちろん「初めまして」の方々もたくさんいらっしゃいます。ほぼ初対面の人だからこそ話せることもあれば、ある程度の関係性が築けている人だから話せることも。
どのような環境を設定できるかによって、そこで起こることも変わってきます。
いかに想像し、関わり合い、共有することができるか。
今後も演劇の手法を取り入れた「コミュニケーション」と「ケア」に着目したワークショップなどのプログラムを実施していきたいと考えています。
美術館×演劇プログラム「ここにいること つたえあうこと」
次回のワークショップは…
弘前市を拠点に活動する劇作家を講師にお招きし
ミニ劇作ワークショップ「おはなしスケッチ」を開催します👀
テーマは「身近なものを『面白い!』と思う感性をやしなう」です。
街並みをスケッチするように、弘前の風景から演劇を作ってみませんか?
演劇の台本(おはなし)を創作する「劇作」を、ペープサート(紙人形)などを作って動かして実践・体験するワークショップです。
材料などは美術館で用意します。
講師:藤島和弘(演劇ユニット 一揆の星・主宰)
日程:2024年1月27日(土) 13:30〜15:30(13:15開場)
会場:弘前れんが倉庫美術館 スタジオB
参加費:無料
定員:20名
対象:中学生以上どなたでも
共催:弘前市、弘前れんが倉庫美術館
協力:演劇ユニット 一揆の星
↓申し込みはこちらから↓
皆さんのご参加を心よりお待ちしております!
(テキスト・写真:宮本)
(写真:大澤)