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【レポート】美術館×演劇プログラム|ミニ劇作ワークショップ『おはなしスケッチ』

美術館×演劇プログラム「ここにいること つたえあうこと」
自他のケア/自分の表現/未来を育てるコミュニケーションのはなし


このたび、弘前れんが倉庫美術館では、演劇/演劇教育の手法を知る・体験する3つのプログラムを行います。


1つ目のプログラムでは「ケア」に着目し、自分の心と体の在りどころを体感するようなワークショップを行いました。

★前回の活動レポートはこちら⇩
https://hmoca-museum.note.jp/n/n91637418b13f



2つ目のプログラムでは、自分の言葉で「表現」することに焦点を当てて、劇作を体験できるワークショップを行いました。
今回はその様子をレポートします。


身近なものを面白いと思う感性をやしなう|ミニ劇作ワークショップ『おはなしスケッチ』


1月27日13:30スタート。
講師に藤島和弘さん(「演劇ユニット 一揆の星」主宰)をお招きし、劇作を体験するワークショップとして、日常の体験や質感を表現とリンクさせながら、短い会話劇を作ってみる活動をしました。

まずは自己紹介、そしてウォーミングアップ


今回のワークショップには10〜50代の幅広い世代の参加者にお集まりいただきました。
まずは講師含めて自己紹介から。
名前と「好きな物語」を一言ずつ話していただきました。

「好きな物語」が思い浮かばない人は「好きな寿司ネタ」を紹介しました。


そして軽く体も動かしながら、参加者同士で名前を呼び合ってみようということで、透明なボールをまわすシアターゲームも行います。

透明なボールのキャッチボール。投げる時に相手の名前を呼びます。
ソフトボールから徐々に大きくし、スイカ、巨大な風船を出現させ、最後はバスケットボールと風船の2つを同時に回して遊びました。


「だれ・どこ・なに」で ものがたり


ほどよく体と緊張がほぐれたところで、劇作の話題に。
藤島さんが普段脚本を執筆する際に気を付けていることや、書き始めの際に行っていることを簡単にレクチャーしていただきました。

書き始める前の準備として「だれ・どこ・なに」の3要素を考えます。そして執筆を始めてからも、困ったらそれぞれの項目について考えていきます。

物語は「だれ(が)・どこ(で)・なに(どんな出来事)」の3つが揃うとできてしまいます。

今回の活動では、人物を作り、セリフ主体で進められる会話劇を作るため、いかに会話ができていくかが重要になります。

「だれ」では、その人物の性格や性別の他に、職業や趣味、さまざまな設定などを考えることで、「こういう人ならこう喋るだろう」という状況を作り出すための準備をします。
また「なに」では、人生の変わり目(結婚、死、就職、恋愛)などを考えることで、物語全体の構成・起承転結を同時に考えていくことにもなります。


人物像を想像して会話劇創作


劇作のレクチャーを経て、ここからはグループワークに。
ワークショップの前半は、「だれ」の部分から会話劇を創作してみました。

今回は俳優の代わりに、新聞紙で簡易の人形を作り、それを人物に見立てて会話劇を創作します。

新聞紙を見開き1枚分使用します。


新聞紙を割いて、折って、重ねて、貼って、こんな形の人形ができました。


人形ができたら、今度は人物像を考える活動に。
まずは名前を考えます。

名前ができたら人形に貼り付けておきます。


名前が付けられたら、人物像を構成する要素を参考にしなが具体的な人物像を考えてみます。
例えば、年齢を考えると職業が想像できたり、趣味から年齢を想像したり、何かの要素に引っ張られるようにして人物像ができることも。

藤島さんレクチャーで紹介があった要素を参考に考えました。
細かな癖なども、会話劇になると活かされる場面が出て来るそうです。


人物像ができたら、いよいよキャラクターを動かしていきます。
ここでのお題は、参加者が個別に作った「人物が同じ場所で出会って会話する」ことです。
まずはグループ内で、それぞれが考えた人物像を共有し、そこから具体的にその人物たちがどこで出会うかを考えていきます。

それぞれの人物の情報を共有してみると、接点をどう作り出すか悩む場面も出てきました。


お互いの人物設定を受けながら、どんなシチュエーションなら出会えるかを考え、ちょっとずつ人物像の要素も書き加えたりしながら話し合いました。


「だれ」「どこ」が決まったら、グループごとに30秒の会話劇を発表しました!

このグループは、3人の人物に共通点がなかったので「どこ」を考えるのが難しく、1人は海外出身という設定もありましたが、最終的に「サウナ」での一コマを作りました。
こちらのグループでは、左のキャラクターの名前を受けて、他のキャラクターの特徴を後付けしながら物語の展開を作りました。


複数人で人物像を共有し状況を作る作業を経ることで、あらかじめ考えた人物設定が変化する場面も見えられ、コミュニケーションをもとにアイディアが変容していました。


状況から会話をつくる


後半は、風景写真をもとに「状況から会話をつくる」創作活動をしました。

藤島さんがあらかじめ用意した5枚の写真からグループで1枚選びます。

ワークショップに使用した写真はすべて ©️対馬慎太郎


前半に作った人物像をそのまま引き継いで創作してもよし、新たな人物を作ってもよし、今度は1分の会話劇を創作します。


1分会話劇上演!


さて、いよいよ発表です。
会場は特別に小さなシアターを出現させました。

大きな窓にかけられたカーテンを幕に見立てています。


4グループのどの発表も素晴らしく、ここでは2グループの発表内容を紹介します。


こちらのグループは雪に埋もれた自動車の写真を選びました。
前半作った人物を活かし、山形の銀山温泉を目指すという、会話を繰り広げています。

コンビニアルバイト店員と常連客、そして鳥なのに手羽先が好物のペペロ様というキャラクターが登場します。


そしてこちらのグループはカラオケ大会の風景を選びました。
こちらも前半作った人物を活かしています。
オペラをやっているという参加者の特技も活かしつつ、会場に美声が響きました。

弘前を拠点にする組と八戸を拠点にする組のトップが登場するお話。
インターネット求人サイトで募集し採用した弟分が、カラオケ大会を舞台にドタバタを巻き起こします。


他のグループでは、弘前をかまぼこの街にしようと企む謎のキャラクターが登場するお話、岩木山神社で福男を決めるレースを開催する話を創作しました。


ひらめき・ときめきが創作のタネ


すべてのグループの発表を終え、最後は改めて藤島さんから、劇作のポイントをレクチャーしていただきました。


今回は劇作体験ということもあり、非常に短い会話劇創作でしたが、グループの中ではオチを考えたところもありました。

長編を作る際は、物語の要素である「だれ・どこ・なに」を同時に考え、実際に役者同士会話してみることでできていく要素もあります。
(役者がいると人物設定よりも生身の役者のキャラクターに引っ張られて出てくるものや、舞台セットから出てくる設定もあるそうです)



中でも藤島さんが一番大事にするのは「ひらめき・ときめき」。
お話作りの源泉にもなるもので、心が沸いた瞬間を逃さないことを大事にしていると言います。


何気なく日常で出会う「ときめき・ひらめき」を逃さずキャッチするインプット力と、他者と言葉を交わしたり・書き出したりするアウトプットを重ねることが良い会話劇(コミュニケーション)を作るのかもしれません。

すべてのプログラムが終了した後も、脚本作りに興味がある参加者は、個別に藤島さんとお話していました。


ーーー


あっという間の2時間でしたが、短い会話劇が8つもできました。
こうした創作の場はまた新たな創作のエネルギーに繋がるなることでしょう。
参加者の皆さん、どうもありがとうございました🌷




美術館×演劇プログラム「ここにいること つたえあうこと」
次回のイベントは…


2月23日・24日開催|子どももおとなも演劇で遊んで考えて楽しむ2日間!
「子どもが育つ、未来が育つ 〜演劇であそんでみよう!やってみよう!〜」


美術館を飛び出して弘前市岩木地区で開催します。

1日目は子どもと楽しめる観客参加型のお芝居を上演!
2日目は、子どもたちがゼロから物語をつくる舞台公演を追ったドキュメンタリー映画の上映を行います。映画上映後は、東京からのゲストを交えた演劇教育にまつわるトークも行います。


2月23日・24日両日とも会場は「中央公民館岩木館 大ホール」です!


【1日目】子どもと楽しめる観客参加型のお芝居上演!おはなしワンダーランド「だがし屋ばぁのおはなし玉手箱」

おはなしワンダーランド「だがし屋ばぁのおはなし玉手箱」
【キャスト】1号 へんしんマン Cュタツヤ(ダンサー・振付師) 、2号 おうたちゃん おおしまなおみ(ミュージカル女優) 、3号 おもしろ屋ちゅう ちゅうサン(コミカルマイミストクラウン) 、だがし屋ばぁ むらまつひろこ(演出家・脚本家) 【客演】 おうたの神様 三明智顕(テノール歌手・創造結社ばふらっと)、 奏者 田口綾子(ピアニスト) 【スタッフ】 脚本・演出:むらまつひろこ / 作詞・作曲/川江美奈子 /美術:空間工房タシブトフクシマ /衣装: 亀井愛


日時:2024年2月23日(金・祝)14:00〜15:10
上演時間: 14:00〜15:10(13:30開場)
定員:100名
対象:どなたでも(未就学児は保護者同伴でお越しください)


お子さま連れ、お孫さん連れでお楽しみいただける、観客参加型の作品。東京で再演を繰り返している舞台です。ずーずー弁を話すおばあさんがお話玉手箱を開けると、中から何が飛び出てくるでしょう?おたのしみに。
出演:Cュタツヤ、おおしまなおみ、ちゅうサン、むらまつひろこ、田口綾子、三明智顕(ばふらっと)


↓「だがし屋ばぁのおはなし玉手箱」申し込みはこちらから↓



【2日目】演劇教育の実践を記録したドキュメンタリー映画「じぶんのことば」上映


「じぶんのことば」
【出演】2017年東村山子ども演劇プロジェクトに公募で集まった参加者(小学4年~中学生)及び保護者、大沢愛・村松裕子・叶雄大 【監督・撮影・編集】諏訪麗生【撮影】⻄脇さやか【音楽】印南俊太朗【本番公演撮影・製作】諏訪重浩【表題デザイン】TOKOMA


日時:2月24日(土)
午前の回 10:30〜11:30(10:00開場)
午後の回 14:00〜15:00(13:30開場)

定員:100名(各回)
対象:どなたでも(未就学児は保護者同伴でお越しください)


子どもたちがゼロから物語をつくる舞台公演を追ったドキュメンタリー映画「じぶんのことば」を上映。
まだまだ席に余裕があります!

各回上映後は、同映画にも出演の一般社団法人プレイキッズシアター代表理事のむらまつひろこさんを迎えてトークも行います(参加自由)。


↓ドキュメンタリー映画「じぶんのことば」申し込みはこちらから↓



【映画上映後にはトークを開催!(自由参加です)】


午前回上映後
「演劇教育ダイアローグ「わたしたちのことば」~東京・弘前・岩木で起こったこと~」

登壇者:むらまつひろこ、宮本ふみ、宮﨑充治
進行:太田歩
時間:11:45〜12:30
 

★午後回上映後
感想シェア会「ひろこさんと話そう!」
登壇者:むらまつひろこ
進行:太田歩
時間:15:15〜16:00


2月23日・24日は両日とも会場が「中央公民館岩木館 大ホール」です。お間違いのないようにご来場ください!





(写真・テキスト:宮本)
(写真:大澤)